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DXや業務改革を成功させるには、“あるべき姿(ToBe)”の業務フロー設計が欠かせません。しかし実際には、「ToBeフローを作成したものの、現場が運用できない」「期待した成果が出ない」などの課題が多く見られます。

本記事では、現役コンサルタントの視点から、実現可能で運用定着するToBe業務フローの作成方法と業務設計の進め方を解説します。AsIs(現状)とのつながりや、課題整理・改善策への落とし込みまで、実務的な手順を具体例とともに紹介します。

1. AsIsからToBe業務フローを作成する流れ

AsIsからToBeへの流れを体系的に理解するためには、まずToBe業務フローの目的を明確にし、実現可能な設計図として構築することが重要です。
現状と理想を比較し、変化点を整理・可視化することで、関係者が共通認識を持ち、改善の方向性を具体化できます。

ToBe業務フローの目的を明確にする

ToBe業務フローは理想像ではなく、“実現可能な業務設計図”です。
目的をあいまいにしたまま設計を進めると、結局はAsIsの延長線上にとどまってしまいます。
まず「何を実現したいのか(例:コスト削減・顧客満足度向上)」を定義し、効果指標(KPI)を設定することが重要です。
目的が明確であれば、関係者間の意思統一が容易になり、改革の方向性もぶれることはありません。

AsIsからToBeへの変化点を整理する

現状(AsIs)とあるべき姿(ToBe)を比較し、変化が必要なプロセスを具体的に整理します。
「どの業務を」「誰が」「どのように変えるか」を明確にすることで、改善対象が可視化され、優先順位付けが可能になります。
BPMNなどの標準的な表記を使ってBefore/Afterを並べて可視化すると、関係者が直感的に理解しやすくなります。


2. 問題と課題を明確化する ― 業務設計の第一歩

ToBe業務設計では、現場の問題(事象)と解決すべき課題を区別し、ギャップの本質を捉えることが重要です。
問題の背後にある構造的な要因を特定し、経営と現場の両面から課題を抽出することで、理想と実態の整合性を持った業務設計を実現できます。

問題とは“あるべき姿とのギャップ”、課題とは取り組むべきこと

問題とは現場で起きている事象(例:承認が遅い、データが二重登録)であり、本来あるべき姿とのギャップを指します。
課題とは、そのギャップを解決するための“取り組むべきこと”です。
この2つを混同すると、対症療法的な改善に陥りがちです。課題は問題の裏返しではありません。
ToBe業務フロー設計では、まず「現象(問題)」を整理し、その背後にある構造的な「要因・原因」を特定することで、根本的な改善方向(課題)を見出します。

<問題と課題の関連イメージ>

トップダウンとボトムアップの両面で課題を抽出する

業務課題の抽出は、経営戦略と現場実態の両面から行うことが重要です。
トップダウンでは経営視点から「組織全体の最適化」を意識し、ボトムアップでは「現場の実行性」を重視します。
両者を組み合わせることで、「理想的だが現場に合わない設計」や「部分最適に陥る改善」を防ぎ、実行可能な業務設計につなげることができます。

3. 問題の真因を掘り下げ、“あるべき姿”の業務設計へ

表面的な問題ではなく、その背後にある真因を特定し、課題へと変換することが業務設計の第一歩です。
5Why分析3要素分析(人・ルール・システム)を活用して原因構造を整理し、真因から課題を言語化することで、ToBe業務設計の方向性が明確になります。

真因分析で改善の焦点を定める

課題解決の第一歩は、「なぜその問題が起きているのか」を掘り下げることです。
ToBe業務フローを構築する前に、根本原因(真因)を特定することで、施策の的を明確にすることができます。
真因分析では「なぜ」を5回繰り返す5Why分析特性要因図などを活用し、原因を構造的に分解することが効果的です。

<5Why分析のツリー図イメージ>

人・ルール・システムの3要素で要因を整理する

問題の発生源は「人」「ルール」「システム」の3領域に整理できます。
たとえば、人の要因はスキル不足や認識のずれ、ルールの要因は承認基準の曖昧さ、システムの要因は手入力への依存など。
この3分類で現状を分析することで、業務設計に必要な対策(教育・ルール改訂・システム化)が明確になります。

領域代表的な要因主な対策
人(体制・スキル)スキル不足・教育不足・役割分担の不明確教育・研修・役割再設計
ルール(規定・手順)承認基準の曖昧さ・運用ルールの不統一ルール整備・標準化・再定義
システム(ツール・仕組み)手入力依存・連携不足・UI/UXの課題自動化・ツール改善・統合システム化

真因から課題を言語化する

真因が整理できたら、それを基に改善テーマを定義します。
「属人化している → 標準化の仕組みが必要」といった形で、問題 → 原因 → 課題 → 対応策のストーリーを明確にすることが重要です。
この整理を行うことで、ToBe業務設計の指針が共有され、実行段階での迷走を防止できます。

<課題対応表サンプル>

No分類現状の問題点(原因)課題(あるべき姿とのギャップ)対応策(具体的なアクション)優先度
ルール承認者が多く処理が遅い承認ルートが煩雑で標準化されていない承認権限の階層見直し/ワークフロー化
システムシステム登録が二重になっているデータ連携の仕組みが未整備マスタ統合・API連携設定
属人的対応が多く引継ぎできない業務手順の明文化・標準化が不足手順書作成・教育体制の整備
ルール+人データ分析に時間がかかるKPI管理が分散・非効率BIツール導入・集計自動化

4. 課題と対応策を整理する ― 実現可能な業務設計

課題ごとに実現性と効果の2軸で対応策を整理し、優先順位を明確にします。
実現性の判断には、コスト・リソース・体制・リスクなど8つの観点が有効です。
その上で、AsIs/ToBeの業務コストをシミュレーションし、対応策を現実的な業務設計に反映させることが成功の鍵となります。

対応策を“実施のしやすさ × 効果”で分類する

課題が明確になったら、それぞれの対応策を「実行しやすさ」と「効果」の2軸で整理します。
すぐ実行可能な施策を優先することで、短期的成果を得ながら継続的な改革を推進できます。
このマトリクス整理により、リソース配分や意思決定が効率化され、改革プロジェクトの進行管理も容易になります。

<実現性 × 効果の4象限マトリクスサンプル>

<実現性評価観点(Feasibility)>

観点カテゴリ具体的な評価項目補足説明・チェックポイント
① コスト面初期投資コスト(システム導入費、人件費)・運用コスト(維持・教育・ライセンス)費用対効果が低い場合、優先度を下げる。ROIの観点で確認。
② 人的リソース専任担当者の確保可否・スキル/知識レベルの適合・人材増員の必要性現有メンバーで実行可能か、外部支援が必要かを判断。
③ 組織体制/ガバナンス部門間調整の難易度・承認プロセスの複雑さ・権限移譲の必要性組織変更・役割変更を伴う場合は時間・抵抗が大きい。
④ システム・技術面既存システムとの整合性/連携可否・IT部門リソースの空き状況・ツール導入の難易度現行インフラとの整合・セキュリティ制約を確認。
⑤ 時間軸/スケジュール実行に必要な期間・他施策との重なり・法令・年度計画の制約DX推進ロードマップ上での優先順位を考慮。
⑥ 現場定着性(運用面)利用者が受け入れやすいか(UI・手順)・現場文化との相性・教育/周知コスト実行は容易でも、現場が使わなければ実現しない。
⑦ 外部依存性外部ベンダーの関与度・パートナー調達可否・外部サービスの安定性依存度が高いほど、実現リスクも高まる。
⑧ リスク要因不確実性の大きさ・規制・監査対応リスク・社内抵抗の可能性実行フェーズでの想定外リスクを事前に見積もる。

※実務ではこれに重みづけや評点を追加し、ポイント化することもあります。

業務コストをAsIs-ToBeでシミュレーションする

業務変更に伴う効果測定の一つとして「コスト(金額・作業時間)」があります。
シミュレーションは簡単なものであればExcelで実施しても良いですが、複雑なプロセスの場合は、専用のシミュレーションソフトを利用するのが効率的です。
定量的な提案は、変革反対派に対しても説得力のある見せ方となります。

対応策を業務設計に反映する

問題に対する課題を洗い出し、対応策の優先順位を付け終わったら新業務フロー(ToBe)に反映させていきます。
関係者間で議論した結果、優先度が変わる可能性もあります(今期予算がなくなった、体制変更を計画中など)。
ToBeフローの修正が発生することを前提に、スムーズに変更点を反映できるような体制を整備しておきましょう。

5. ToBeフローは業務設計書 ― 資産として活用

業務の実行を個人の経験や暗黙知に頼ると、属人化や品質ばらつきが発生します。
ToBe業務フローを「業務設計書」として明文化することで、標準化と教育の基盤を構築可能です。
BPMN形式を活用すれば、手順・役割・ルールを統合した一貫性のある業務設計と運用が実現します。

業務設計書が存在しないリスク

業務の実行方法が口伝えや個人ノウハウに依存していると、属人化・品質のばらつき・引継ぎ困難といったリスクが発生します。
ToBe業務フローを明文化して設計書化することで、共通理解が形成され、教育や標準化の基盤にもなります。
設計書は「運用を守る盾」であり、「改革を進める地図」でもあります。

ToBe業務フローを設計書として活用する

ToBe業務フローは単なる図面ではなく、手順・役割・ルールを統合した「業務設計書」として活用できます。
BPMN形式を用いることで、関係者間で統一的に理解でき、システム開発やマニュアル作成にも転用可能です。
これにより、設計段階から運用・改善まで一貫した業務管理が可能になります。

6. 新業務運用を定着させる ― 業務設計を簡単に管理する仕組み

ToBe設計の価値は、運用を通じて定着し改善されてこそ発揮されます。
KPIの可視化や稼働データの分析によって、業務状況を客観的に把握し、現場が主体的に改善へ関与する仕組みを構築することが重要です。
BPMツールを用いて管理を自動化すれば、PDCAを短いサイクルで回す“進化する業務設計”が実現します。

定着フェーズでは“可視化”と“振り返り”が重要

新業務を導入しても、継続的に使われなければ意味がありません。
定着フェーズでは、現場での実行状況を“見える化”し、課題を定期的に振り返ることが重要です。
KPIや稼働データをモニタリングすることで、ToBe業務設計が現場でどの程度機能しているかを客観的に把握できます。

特に重要なのは、業務部門のメンバー自身が「KPIに影響を与える日々の業務行動」を理解し、改善の主体になることです。
これにより、改革が「現場任せ」ではなく「現場発の改善文化」として根づきます。

<プロセスKPIダッシュボードサンプル>

プロセスKPIダッシュボードサンプル

管理をシステム化し、改善サイクルを回す

業務運用の継続的改善には、PowerPointやExcelによる管理では限界があります。
BPMツールやプロセスマイニングツールを活用し、業務データの自動収集と更新履歴の管理を仕組み化することが効果的です。

これにより、処理時間・ボトルネック・変更履歴といった実績データを定量的に把握でき、“感覚的な改善”から“ファクトベースの改善”へと進化します。
さらに、この仕組みを組織全体で共有することで、PDCAを短いサイクルで回せる「進化する業務設計」が実現します。


まとめ[ToBe業務フローの策定ポイント]

ToBe業務フローは、理想論ではなく「実行できる業務設計書」です。
現場の実態を踏まえつつ、継続的に改善できる仕組みとして設計しましょう。

ToBe設計成功のための5つのポイント

  1. AsIsの可視化と課題抽出: 現状の課題と真因を明確にする
  2. 実現可能性の重視: 効果と実施難易度を両軸で評価する
  3. 設計書化と標準化: BPMNなどの共通形式で構造化し会社資産にする
  4. 定量データで検証: KPIや稼働実績を継続的に分析する
  5. 改善サイクルの運用: 変更・定着・改善を仕組みとして回す

これらを実践することで、業務設計は単なるフロー作成ではなく、
経営判断と現場改革をつなぐ「戦略的なプロセスデザイン活動」へと昇華します。

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