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クラウドERP導入が進む中で注目される「Fit to Standard」。
「業務をシステムに合わせる」──そんな“我慢の標準導入”が当たり前になっていませんか?

本記事では、Fit to Standardの本来の意味と、日本企業が誤解しがちなポイントを整理します。
さらに、失敗を避けるために必要な要件定義の考え方と、成功企業が実践する“柔軟な標準導入”の進め方を解説します。

1. 「Fit to Standard」とは何か

ERP標準導入の考え方「Fit to Standard」の原点

「Fit to Standard」とは直訳すると“標準に合わせる”という意味です。

ERPシステム、特にSAPなどの海外製ERPが提唱した導入手法で、システムの標準機能を最大限活用し、業務をできるだけ標準プロセスに合わせるという思想に基づいています。

従来は「業務に合わせてシステムを作る(カスタマイズ)」が常識でした。
しかしクラウドERPの時代では、頻繁なバージョンアップに対応するために、“標準を維持すること”がコスト削減と持続性のカギになりました。

この考え方が「Fit to Standard」が注目される理由です。

海外と日本のFit to Standard、その理解のズレ

実はこの「Fit to Standard」、海外と日本では受け止め方が異なります。

海外では、標準機能を軸にしつつも「足りない部分は外側で拡張する」アプローチが一般的です。
ローコード開発やAPI連携を活用して業務を柔軟にカバーし、コアシステム(ERP)はできるだけ“クリーン”に保つという発想。
SAP社の提唱する「Clean Core+Side by Side Extension」もその一例です。

一方、日本では「Fit to Standard=業務をシステムに完全に合わせる」「カスタマイズはしない」と誤解されがちです。
背景には、独自の商習慣・承認文化・帳票要件など、業務の複雑さゆえに“標準化”を受け入れにくい現場構造があります。

その結果、「標準導入」ではなく「我慢の標準導入」になってしまい、現場が疲弊して本来の目的(業務改革)が進まないケースが後を絶ちません。

  • 海外 ⋯ 標準を守りつつ、必要な部分は別レイヤーで柔軟に開発する
  • 日本 ⋯ 標準に合わせることが目的化し、“我慢”が常態化する
あるべき Fit to Standard

2. ERP標準導入の3つの「理論上のメリット」と現実の壁

Fit to Standardの推進時には、次のようなメリットがよく語られます。

  1. 導入コストの抑制

カスタマイズを減らすことで開発期間と費用を削減できる。

  1. 保守・アップデート対応の容易化

標準構成を維持できるため、クラウド更新にも追従しやすい。

  1. グローバル標準への統一

海外拠点とのシステム共通化が進み、グループ経営を効率化できる。

ただし、これらは“理論上のメリット”です。
実際の現場では、業務の細部が標準機能に収まりきらず、結果的に「想定以上の運用負荷」や「Excel逆戻り」が発生することも多くあります。

理論上のメリットと現場業務のリスク

理論上のメリット・現場業務のリスク

3. Fit to Standardの落とし穴 なぜ“我慢の標準導入”になるのか

現場業務が標準機能に“収まりきらない”理由

最初に直面するのは、業務実態と標準機能のギャップです。
取引先ごとの商流、帳票の独自フォーマット、社内承認ルートなど、業務の“ちょっとした差”がERPの想定外であることは珍しくありません。

標準導入のはずが“業務改変プロジェクト”になっていないか

「Fit to Standard=業務改革」と誤解され、現場の納得を得ないまま「システムに業務を合わせる」方向に進むと、プロジェクトが“現場切り捨て型”の改変計画になりがちです。
その結果、導入後に「業務が回らない」「結局Excelに戻る」という声が噴出します。

確かに、「非効率な業務を見直す」ことは重要です。
しかし、「標準導入がポリシーだ」の一辺倒な姿勢で、企業の強みとなる差別化プロセスまで均一化してしまうと本末転倒です。

「できる」と言われた機能が使えない認識ギャップの罠

導入ベンダーから「その機能はあります」と説明されても、実際のUIや動作を確認すると全く合わないケースもあります。
最終的には「運用でカバーしてください」と言われて終わる。
ユーザー企業が自ら業務運用案を設計できる体制がなければ、ここでつまずきます。

「カスタマイズゼロ」が目的化する危険性

「カスタマイズをしない=正解」と考えるのは危険です。
重要なのは、どこを標準で運用し、どこを拡張するかの設計思想。
むやみに削るより、必要な拡張を明確に線引きしておく方が結果的に安定します。

4. Fit to Standardを成功に導く3つの実践ステップ

要件定義で行う「標準・拡張・外付け」の線引き設計

Fit to Standardを成功させるカギは、要件定義フェーズでの“線引き設計”にあります。

要件定義で行う「標準・拡張・外付け」の線引き設計

この分類をもとにFitとGapの分析を行うことで、「合わせる」「守る」「拡張する」の判断基準が明確になります。

Gapを埋める“業務フロントレイヤー”という現実的アプローチ

最近注目されているのが、ERPの外側に業務フロントレイヤーを設ける考え方です。

これはSOA(サービス指向アーキテクチャ)の発展形で、ERPを“中核(コア)”に保ちながら、周辺業務やUIを柔軟に拡張する設計思想です。

代表的なツールには以下のようなものがあります。

  • intra mart ⋯ SAPを含むERPのフロントワークフローとしての採用実績が多い。
  • OutSystems ⋯ SAP S 4HANAなどとの公式連携コネクタを持ち、周辺アプリを高速開発。
  • Microsoft Power Platform ⋯ SAPデータをノーコードで扱える公式コネクタを提供。
  • GeneXus ⋯ Low Code for SAP Systemsを掲げ、ERP周辺の拡張アプリ構築にも対応。

これらを組み合わせることで、ERPはコアプロセスを担い、業務フロントレイヤーが柔軟性を担保する構成が実現します。

成功企業が実践する「標準と柔軟性」の線引きルール

Fit to Standardを“経営判断”として捉えている企業ほど成功しています。

  • 変えるべき業務(非競争領域) 標準プロセスに合わせる
  • 守るべき業務(競争優位領域) 外付け・拡張で柔軟対応

この線引きを明確にし、経営・業務・ITが共通理解を持つことが“我慢の標準導入”から脱却する第一歩です。

まとめ Fit to Standardは“我慢”ではなく“設計思想”である

Fit to Standardは「業務をシステムに合わせる」ことではありません。
それは、どの部分を標準化し、どの部分を拡張するかを設計する考え方です。

カスタマイズを避けること自体が目的ではなく、“標準を活かしながら、柔軟性を保つ”というバランス設計が本質です。

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